2008年12月31日

Billy Wilder, The Apartment(アパートの鍵貸します!), 1960

コメディという形式を借りないことには語れないようなことってのがある。これは本当に、コメディでないとあまりに辛いお話し。シャーリ・マクレーン演じるフランに片思いするジャック・レモン演じるボクサーの立場も、不倫する男にひたすら苦しめられるフランの立場も、どうしようもなく辛い。そして、息詰まった苦しい思いのする話を華のある役者たちと、多彩な道具立て、見事な筋の運びで完璧に語ってみせるその手腕。これはほんとに稀有な傑作だということが、ある程度歳を取ってみた今になるとよく分かる。

まず、ボクサーのキャラの造形。どうしようもなくお人好しで、下心なんてこれっぽっちもない。彼がフランと同じくらい、上司の立場についても心配しているところなんか、まさに絶妙のバランス。男というものを知っている立場から言わしてもらうと、これはほとんど神話的なまでに無垢なキャラクターだと言える。そして、もう無限大に優しい。自分の部屋で情事を楽しんだことのある、自分が好きな女性が自殺未遂をしたあとに回復するまでどうやってつきそえるか、という問いに対する完璧な答えを彼をやってのけるのである。これはほんとうにほれぼれする。

そして、シャーリ・マクレーンのキュートさ。これはほんとにキュートってものがこの世にあるとしたら、それは彼女によって創造されたと言っても過言ではない。それくらい神聖なまでにキュート。その彼女がどうしようもない男によって苦しむのである。そして私たちはそれを見ることによって心を痛めずにはおられない。女性ってもののこうした使い方、ワイルダーという人は女性の魅力ってものをほんとによく分かっていると思う。

一人芝居していても画面が持つほど芸達者なジャック・レモン演じるボクサーの無垢さ加減にノックアウトされ、シャーリ・マクレーンのキュートさゆえにその惨めさに心を痛める。これはそういう大人の映画です。最後のシーンは感動的なまでに美しい。



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2008年12月20日

Blake Edwards, Switch(スウィッチ 素敵な彼女?), 1991

男が女になるという話。
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2008年12月18日

Francis Veber, L'emmerdeur, 2008

実は本国で劇場公開されているフランス映画はコメディがほとんどである。が、それらはほとんど日本には入っていなくて、時代劇とかクライムものとかが入っているのだと思うけれど、それは本国の全体的な傾向を反映していないわけだ、ということが最近よく分かってきた。で、この映画は、今年見たフランスのコメディ映画の中でも一番笑えた。これはほんとうにひたすら馬鹿馬鹿しくて、最高にくだらないのだ。

この映画、原作は監督本人の戯曲で、なんとビリー・ワイルダーが遺作として(Buddy Buddy)監督したという由緒あるもの。さすがにヴェテランの監督作品だけあって、笑いが次から次へと訪れるように計算されている。この種の笑いってのはマルクス兄弟直系のものなんだなあってことが、最近彼らの映画をみたばっかりなものだからよく分かる。出ている俳優たちも、さすがに馴染みのある人ばかりになってきた。日本でも公開されるといいけど、まず無理だろうなあ。なにしろ、フランス映画ってギャグっていうイメージじゃあないからなあ、日本では。
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2008年12月16日

Gavin O'Connor, Pride and Glory, 2008

James Grayの前作、We own the nightと始めの展開がすごく似ていたので、一瞬リメイクかなんかかと思ってしまった。でも、お話しは全然違って、警察内部の腐敗に警官として復帰したエドワード・ノートンが巻き込まれるというお話し。きっとほんとうのお話しを元にしているかなんかで、すごい追い詰められ感が出ている。汚職するものも命がけだし、そのバッドサイクルから抜けられないことに絶望的な想いを抱いている。そして、そうした配下を抱える上層部もまた絶望しきっていて、誰かにどうにかしてほしいと思っている。だいたいそんなお話しだったと思う。

これ見て思ったのは、やはりノートンはかっこいいってことかな。彼のキャリアの中でもピカ一じゃあないかなあ、この作品。ラストの破滅的な展開もすごかった。ちょっと地味目の映画だけど、これはなかなかいい作品だと思う。



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2008年12月10日

2008年ベスト

2008年ベストについてそろそろ考察するべき時がきたのではないかと思う。もちろん見ていない作品もたくさんあるのだし、ぼくは8月からしか見ていないので、それ以前の作品についてはまったく無知なのである。でも、友達の言うところによると、No Country for Old Men, In Bruges(Bons baisers de Bruges), Eldorado, Night and Dayがよかったそうだ。Eldrado以降はぼくも見た。

で、ぼくとしては、もちろんNight and Dayに加えて、Wall-E、クンフーパンダ、Walz with Basir、Le premier jour du reste de ta vie、Two Loversなんかがやはりトップにリストアップされる感じ。Die Stille vor Bachや、Mama Mia !もかなりよかったし、Wantedはアクション映画のなかでは一番すごかった。だいたいそんな感じかな。

秋にあまりいい作品がなかった気がするのが少し残念だけど、まあ終わりよければ全て良し。
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2008年12月08日

Saul Dibb, The Duchess, 2008

公爵夫人という題のKeira Knightley主演の時代劇。要するに彼女にコスチュームプレイをさせて、ひたすら苦しめさせちゃおうという感じのお話。お話自体はどこにでもありそうなものなのだけれど、これをキーラがやっているところがミソなのであり、そこにしかミソはないと言ってもよい。Hayley Atwelもまた魅力的だし、Dominic Cooperもかわいいけれど、やはりキーラの存在感を前面に出した画面の作りになっている。

とにかく、この監督はマゾだと思う。いや、サドかもしんないけど、とにかく、キーラが苦しんで苦しんで苦しめられる姿ばかりを二時間堪能できるのである。これは間違いなく、キーラのコスチュームマゾプレイを楽しむために企画された映画に違いない。っていうか、これ作ろうと思った人たちってのは度胸あるよなあ。これだけ女性がひどい目に遭う映画を作ろうなんてさ。でも、これがキーラだからこそいい。ほんとに。いや、というかもうこれだけでお腹いっぱいでほかに言うことはないんですがこの映画。



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2008年12月07日

Jean-Pierre Limosin, Takeshi Kitano, l'imprévisible, 1999

リモザンが"Cinéma, de notre temps"というテレビ番組の企画として数年間にわたって撮ったドキュメンタリーの一本で、これは総長時代の蓮實重彦が北野武にインタビューするというとんでもない企画。で、すんごい面白い。蓮實さんがけっこう変な質問を真顔で真剣にするのがなんともユーモラスなのである。

で、いろいろと北野監督に質問をして、どんどん語らせていくのだけど、子ども時代の母との戦いとか、映画における音とか、天使のテーマだとか、恋愛とか暴力の描写についてだとか、日本についてだとかいろいろ。

一番印象に残ったのは、あなたの作品では海はよくでてくるのにいつも砂浜にとどまっているばかりだという蓮實さんの指摘に、北野監督がぼくが夢を見ると山は幸せなイメージとしていつも出てくるのだけれど、海が出てくるときはいつも死んだりするような夢ばかりだ、とか言っていて、あー人によって夢に出てくるイメージの意味合いっていうのはほんとに違うもので、そういうのが彼のイメージの世界に大きな影響を与えているんだなあと感心した。

で、そのあとに『ソナチネ』での海辺での紙相撲のシーン挿入されて、そのモンタージュの仕方、コマ送りの早さを変えたり、音楽の挿入の仕方なんかが完璧で、実際の人間をコマ人形に見立てて紙相撲のまねごとをするシーンはただただ美しいのだった。

ある映画のある瞬間には、息をのむというしかないほど恍惚となるような美しいシーンがあることがたまにあるのだけれど、その紙相撲のシーンは滑稽だけれども美しく、今までにみた類がないものだったのだ。一緒に見ていた人たちはただ笑っていたのだけれど、あのシーンで声を失っているような人と映画について語り合いたいものだと思うのであった。
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2008年12月06日

Jean-Pierre Limosin, Tokyo Eyes, 1998

Jean-Pierre Limosinは2002年のNovoでファンになって以来、フランス映画祭でCarmenという新作を見たことがあったけれど、この日本で撮った伝説的な作品を見ていないままだった。ところが先日フランス人と日本人夫妻主催の映画の会でようやく見られたのだった。

終わった後、結局あいつは死んだのか生きているのか、とかフランス人がさっそく言い出したのには閉口したけれど、こちらで東京の1990年代の姿を思い出すというのはとても変な話だ。これは1998年公開だけれど、撮影は1997年で、それも1997年のけっこうはじめの方だと思う。なぜかというと、まだ公衆電話に「偽造テレカの使用は犯罪です」とか書いているから。あー懐かしいねえ。あの時代、上野にたくさんいた偽造テレカを売っていたトルコ人たちはどこにいったんだろうねえ。

で、武田真治と吉川ひなのがとても若い! うわーこいつらまだ十代じゃないのかって感じ。しかもけっこういい感じだし。これは監督の使い方が上手いのだと思う。武田真治とか日本の訳の分からない感じの若い男の雰囲気がとてもよく出ていた。吉川ひなののしゃべる日本語はどこかぎこちないほど丁寧なのが変だけれど、そこが逆に若い女の子がとても真剣に言葉を紡ぎ出している感じで悪くないのだ。こういう、必死でしゃべろうとする日本人がいる日本映画ってあんまりないんだよね。悪くないよ、ほんと。

でも、どうしてフランス人がこんなに東京っていう都市をうまく少し幻想的な仕方で見事に描き出すことができるんだろうねえ。まあ、国籍なんて関係ないのだろうけど、東京の、そして東京に住む人々のどこか病気っぽいところが題材になっているのは間違いないわけで、そういうふうにフンス人を惹きつけちゃう街っていうのはほんとに変な街だと思う。離れていると、ほんとに東京の変さ加減ってのがよく分かる気がする。



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2008年12月05日

Jean-Francois Richet, Mesrine : L'Instinct de mort, Mesrine : L'ennemi public n°1, 2008

70年代あたりのヤクザな連中の話ってのがここんとこよく上映されていて、このまえはLa Bande à Baaderというドイツ赤軍の映画を観て勉強になった気がする。で、こっちは同時代のフランスの犯罪者のお話で、なんと二部作になっていて、フランスが世界に送り出す大作映画なのだ。とくに二部のほうはどこかで見たフランスの俳優たちが勢揃いしているので、気合いがほんとに入っているんだと思う。ヴァンサ・カッセルもとてもよい。

で、ほんとに、え?これってけっこうほんとの話だったの?って一部を見終わって気づいたくらいで(二部があるってことも知らなかった)、まあ無茶苦茶しまくる人なんだよね、このMesrineって人。脱走した刑務所に戻って仲間を脱走させようとするわ、捕まってもなんか凱旋しているみたいな感じだし、もうヒーロー気取りなんだよね。あーこういうキャラが許される社会って日本ではありえないよなあとつくづく思った。フランスは犯罪者に寛容な国だ。まあ、寛容というかは、あくまで人間として扱うってだけだと思うけど。

だいたいこいつ、何回捕まって何回逃げたんだよ。三回か? もうこれはほんとお話し過ぎるって。よく出来過ぎ。女にもモテすぎ。最後の死に方も様になりすぎ。まあ、そんな映画。テレビとかでしてたら、けっこう真剣に見ちゃう映画だとは思う。



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