2011年10月06日

Ismaël Ferroukhi, Les hommes libres, 2011

ドイツ占領下のパリで、レジスタンスに参加したあるアラブ人青年の物語。ドイツ占領下のパリってのはなんだか郷愁をかきたてるのか、よく題材になるけれど、アラブ人が主人公ってのは今までなかったと思う。アラブ人がフランス人を助けるって話もまあ滅多にない。



はじめはヴィシー政権側の政府からパリのあるモスクを見張るように命令されていたアラブ人の青年が、モスク周辺で歌を歌っていたサリムという青年との友情をきっかけにレジスタンスに加わる。じつは政府側を裏切るとことか、サリムと仲良くなるところかあっさり描かれていて、彼の心境にどういう変化があったのかはほとんど分からない。よく言えば淡々としている。

さて、モスクはじつはユダヤ人たちにアラブ人であるという偽の証明書を配っていた。それでモスクが怪しまれて、サリムも捕まったりする。助かる人も助からない人もいる。これは実話に基づいているらしく、サリムはやがてパリでバーを開いて、アンダルシアの歌を広めたらしい。映画の中でも、彼の歌がけっこうフィーチャーされていて、これがなかなかよかった。
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2011年09月27日

Valérie Donzelli, La guerre est déclarée, 2011

子供が脳にがんを持ったことが分かった夫婦の話。というと簡単だけど、話は出会ったところからはじまって、子供ががんと分かる過程、手術、そして手術後の転移予防のための治療の過程、その間の夫婦の生活、二人の関係なんかが、細かく語られる。これは今年最高のフランス映画の一つなんだけど、予告編でそれが伝わるだろうか。



なにがいいって、まず二人の心境がダイレクトに伝わってくる。いや、伝わってくるというよりかは、体験を共有させられる。子供の病気への不安、真実が分かったときの恐怖、それでも頼れる相手がいることの安心感などなど、二人が味わう心情をそのまま体験させられる。これはきついけれど、すごい

そして、演出も気が利いていて、ときにはユーモラスだったり、ホラーだったり、ホームドラマだったり、いろんな要素がある。頻繁に、音楽を全面にならして、会話がかき消される、というような演出がされるけれど、これも下手すればくさくなるけれどまあ許せる範囲でいい効果をあげている。曲の選び方はうまくて、これのサントラがほしくなるくらい。



じつはこの話、実話らしい。それも監督本人と、その元夫の話らしい。そして、その二人がそれぞれの役を演じている。なんともつらい生の体験を、こうして昇華して、一つの作品に仕上げるってのはまあ大変な作業だったと思う。その勇気もすごいし、できあがった作品もすごい。今年一番のフランス映画、というより、ここ数年で一番強烈な映画の一つだ。
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2011年09月17日

Nanni Moretti, Habemus Papam, 2011

監督はナンニ・モレッティ、主演はMichel Piccoli、脚本はNanni MorettiとFrancesco PiccoloとFederica Pontremoli、撮影はAlessandro Pesciのイタリア映画。


「Habemus Papam」とは新しい教皇が誕生したとき、サンピエトロ広場で枢機卿がいうラテン語で、文字通りには「私たちは教皇をもっている」という意味の言葉。これは、そのとき、バルコニーに顔を出せないで逃げ出す教皇の話。偶然選ばれてしまって鬱になってしまった教皇は、精神分析家を呼んでもらうけどなにも変わらず、ついに教皇庁を逃げ出して街を放浪するが、人々はまだ教皇が中にいると思いこんでいる・・・



まあ舞台がバチカンだとか、鬱の教皇だとか、そういうのはすべて滑稽さを醸し出すための味付けだと思っていい。別にこの映画はカトリックを批判したいわけでも、宗教をおちょくりたいわけでもなく、教皇がいるのに不在で誰かもわからず、当の本人はそのニュースを街角で見ているとか、そういうシュールな状況をおもしろがるところに本質がある。枢機卿がなぜか精神分析家の指導の元バレーボール大会をはじめるのもおかしい。

この監督の作品は見たことがなかったれど、今年58になる巨匠だ。歳をとって、好き勝手なことをやっているという感じ。演出も堂に入っているし、各俳優の味わいも面白い。こういう映画は経験をうまく積んだ監督にしかとれなないと思う。
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