2011年04月09日

Anthony Mann, The Naked Spur, 1953

アンソニー・マンの『裸の拍車The Naked Spur』は傑作だ。

主人公はジェイムス・ステュアート、ヒロインは『サイコ』のシャワー・シーンであまりにも有名なジャネット・リーの西部劇。

「西部劇というジャンルの終わり頃に作られた作品」というにおいがプンプンとする作品で、西部劇の歴史についての授業があったらまず登場するだろうという作り。

お話は、ジェイムス・ステュアートが賞金稼ぎに悪党を二人の仲間とつかまえるのだけど、その賞金をめぐって三人のあいだには緊張が走るし、悪党はそれを利用してなんとか逃げようとする。さらには悪党の女友達ジャネット・リーも、悪党と主人公との間で右往左往する。

というわけで、お話はほとんどサスペンス。でも西部劇っぽい活劇もあるし、舞台はロケ。荒涼とした道中の風景が、人物たちの心象とマッチしている。

ところで、主人公の二人の仲間というのは、鉱探しに今までずっと無駄に人生を費やしてきた老人ジェシー(ミッチェル)と、酋長の娘に手を出してインディアンに追われる騎兵隊くずれのロイ。主人公も保安官だと嘘をついていたり、なかなか完璧にまっとうな人間というのはこの映画には出てこない。

途中、復習に燃えるロイが勝手に手を出して、インディアンの一体を全滅させる戦いのシーンがあって、これはすごい迫力。おそう方もちょっとびっくりした感じの奇襲になるのだけれど、描き方が相当リアルだ。

ラストの締めくくり方はこの映画ならではの微妙な感じ。西部劇が終わりにさしかかった、というのは、もはや正義と悪を分けることができなくなったからで、そこでは一人の人間に同時に善と悪が潜むことになる。あるいは一人の人間のその曖昧さ事態が問題になる。これは、そういうたぐいの映画の一つの代表的なものだと思う。


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2008年10月27日

Douglas Sirk, Imitation of Life, 1959

Douglas Sirk初体験。うわーこれはすごい映画だ。基本はメロドラマなのに、容赦なく厳しい人生を描いてみせるし、ドキドキハラハラものだ。これって、アメリカ映画史上最も偉大な映画の一つなのではないだろうか。

先日リストをエントリーしておいた『死ぬまでに見たい1001の映画』には、サークの映画はWritten on the Wind (1956)とAll That Heaven Allows (1956)は入っているけれど『悲しみは空の彼方に』は入っていない。まあ所詮ある程度大衆性を持たせた本なのでしょうがない。にしても、この映画は金井美恵子の『愉しみはTVの彼方に Imitation of cinema』で知って以来気になっていたので、見られて本当に嬉しい。しかし、今まであまり見る機会がなかったということ自体が責められるべきではないだろーかね。
ラベル:Douglas Sirk
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2008年08月01日

Raoul Walsh, Gun Fury(限りなき追跡), 1953

当時は3Dで上映されたというこの映画、goo映画のストーリーの記述が間違っているところからしても、あんまり有名ではない。でも、俳優はいいし、アリゾナ砂漠も見ものだ。50年代の西部劇はかなり設定が多様で、アメリカ史の勉強にもなっちゃう。舞台は南北戦争後で、兵士だった二人の男を対照的に描いたり、ヒロインについて戦争後いなくなったタイプの南部上流女だ、なんてことにいわせたり、メキシコにはかつての南部があるとか言わせたりする。うーん、アメリカ文学だねえ。

主役はRock Hudson(Ben)とPhil Carey(Slayton)、ヒロインはDonna Reed。見事な悪役を演じたRock Hudsonはサークの作品なんかにも出ており、Donna Reedは『グラン・ミラー物語』で見たことがあった。

面白いのは、これはもちろんインディアンが悪者ではなく、ならずものが悪役なんだけど、'Bullets are democratic, they don't only kill badmen' なんてうそぶく主人公は決して映画では人を殺さないんだよね。だから、途中で仲間になったインディアンが全部やっつけちゃう。インディアンに全部やらせちゃうってのが無茶苦茶だけど、いかにも西部劇っぽい都合の付け方。「西部劇におけるインディアン像の変遷」、みたいな論文を書くときにはぜひ登場させてほしいキャラだ。まあやんないけど。

ところで、カウボーイの靴についている金具、あれはspurといって、馬を急がせるときに使うものらしい。とにかく、荒野冒険ものとか、追跡劇とかを見たい人にはうってつけの映画の一つです。



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