2011年07月17日

Tsui Hark, Once Upon a Time in China III, 1993

ツイ・ハークの撮った『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズは三作どれも面白い。この「天地争覇」は三作目で、一番評価が低いけれど、なかなかどうして面白い。町中で繰り広げられるバトルに、獅子舞祭りの際のごったごた。最後のてんやわんやの戦いなど、どのシーンも見応えがある。

この監督は、カンフーをダンスの一種として見せている。戦いのシーンではまるでミュージカルのように人物が画面を踊りながら飛び交い、純粋な運動を見せてくれる。彼のそのような演出が一つの境地に達したのがこの「天地争覇」だと思う。ここでは一対一の戦いよりも、むしろ群舞が見所で、獅子の踊りなんかは、画面いっぱいを動きで満たせるために使われている。ツイ・ハークはカンフー界のバスビー・バークレーなのだ。

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2011年04月19日

Lucile Hadzihalilovic, Innocence, 2004

日本題で『エコール』と名付けられたInnocenceとゆー映画がある。
これはロリ映画としてちょっと有名になった。



これ、見終わるのに二週間かかった。
PVみたいな作りで細切れになっているので
なかなか先を見ようという気がおきない。
これはぼくの集中力が悪いのか、と思ったらこういうことを
言っている人がいて、大いに溜飲を下げた。

以下引用

「お前らはまだそんなことをやっているのか」

これでもかとばかりに古典的チャイルドポルノのベタな意匠を凝らしているものの、映画は確たる物語を語らず、人物は心を語らず音楽は鳴らず、何ひとつ説明がなされぬまま映画は終わる。作り手の、ハイこれアートでござーいという満足気な顔をスクリーンの向こう側に見た気がして、オレはげんなりする。ああ、またか。またこれなのか。

いいかげんもう21世紀なんだから、せめてこの手の映画はそろそろ絶滅してもいいんじゃないかと思う。キツいことを言えばこれ「お芸術」という万能の言い訳が、無能な作り手たちの避難所として利用されているだけだ。ヒキの強いチャイルドポルノの意匠をちらつかせ、アート系煙幕でドロンすればお芸術映画の一丁あがりというわけだ。こんなのは大昔からあるテキ屋的な手口で、お前らはまだそんなことをやっているのかと思う。いったいいつまでこれを続けるつもりなのだろうか。オレはこういうゴミの山をどんだけ漁れば、心から賛美できる1本のアート映画に出会えるのだろう。考えるだけで気が遠くなってジャンルとしてのアート系を敬遠せざるをえなくなり、だからオレはトム・クルーズが宙吊りになったりセガールが強すぎたりする映画ばかり観てしまうのかもしれない。

もうひとつ。意匠を利用しているもののこの映画がチャイルドポルノではなく、童女愛好者を満足させるためのものでさえないことは鑑賞前から判っていた(そのぐらいは経験で判る)。しかしそれにしても、作り手のこういったきわもの文化に対する「こんなもんだろ」というぞんざいな手つきは終始オレを苛立たせた。失礼ながら、映画を作るには敬意と勉強が全然足りないのではないかと思う



すごく同意できる。ほんとに現代のフランスの「芸術」ってのはこういう意匠レベルのものがすごく多い。というか、ほとんどがそういうものだと思う。まあ、コンテンポラリーアートってもののほぼすべてがそういうものだということもあるかもしらんが・・・

これの映像表現が直接的というか、暗喩が直球すぎるという意見もあって面白かった。
以下引用


僕が『エコール』を観て何で怒ったかというと、ああいう作品は映画として認めたくないからです。少女の無垢なる魂を表現するために少女の肢体や裸を撮影するというのは、チャイルド・ポルノとコンセプトが同じでしょう。それじゃあ映画じゃないじゃん。
例えば『千と千尋の神隠し』で千尋が初潮を迎えていることを気が付いた人は少ない。それは宮崎駿が直接的な表現を避けて、暗喩的に初潮を表現しているからであり、そういった表現から意味を読み取る事のが映画を鑑賞する醍醐味のはず。『エコール』はそれが無い。初潮を迎えたら生理ナプキンが出てくる。性に目覚めたら自分の体をまさぐる。死をイメージする時は本当に死んだふりをする。などといったあまりにも直球すぎる表現が延々と続きます。
一応比喩表現も色々あって「少女=蝶々」「性の目覚め=噴水」という表現をしているんだけど、どれも演出がしつこくて「観りゃわかるよ!」といった感じでした。



というか、千尋が初潮を迎えていたってのは初耳なんですが、どのシーンででしょうか。そういうのを見逃していたってのはちょっとショック。というか、ほかの意味でもショック。




この監督は、別の映画のほうがキテいるみたいね。同じ人が紹介しているけど、ちょっと面白そう。

『エコール』を撮ったのは女性監督のルシール・アザリロヴィック。彼女はやっぱりロリコン映画の『ミミ』を監督した人です。『ミミ』の内容も、少女がロリコンのおじさんに[イタズラされてショックと薬で意識不明になった上に、その少女暴行犯のおじさんがしゃあしゃあと知らん顔している所で映画が終わる]という、マトモな人間なら鑑賞後に怒り出す最悪映画です。もちろん良識ある僕も怒りました。何でこんな映画が一部のお洒落さんたちにウケていたのか疑問ですが、今評価するとしたら町○ひ○くの世界観を先取りしていた作品とも言えます。良識ある人間は町○ひ○くなんか読まないか。
というわけでルシール・アザリロヴィックはフランスの力○靖だとたった今僕が命名しました。彼女の作品からは女性ならではの感性を感じることはできませんが、性犯罪者の感性を感じることはできます。



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2011年04月10日

Marcel Carné, Drôle de drame ou L'étrange aventure du Docteur Molyneux, 1937

おそらく日本では未公開の映画。

In Victorian London, the botanist Irwin Molyneux and his wife Margaret Molyneux are bankrupted but still keeping the appearance due to the successful crime novels written by Irwin under the pseudonym of Felix Chapel. Their cook has just left the family, when Irwin's snoopy and hypocrite cousin Archibald Soper that is in campaign against the police stories of Felix Chapel invites himself to have dinner in Irwin's house. Margaret decides to keep the farce of their social position secretly cooking the dinner, while the clumsy Irwin justifies her absence telling the bishop Soper that she had just traveled to the country to meet some friends. However Soper suspects of Irwin and calls the Scotland Yard, assuming that his cousin had poisoned his wife. Irwin and Margaret decide to hide the truth to avoid an exposition of their financial situation, moving to a low-budget hotel in the Chinese neighborhood, getting into trouble. Written by Claudio Carvalho, Rio de Janeiro, Brazil
タグ:Marcel Carne
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2011年04月09日

Anthony Mann, The Naked Spur, 1953

アンソニー・マンの『裸の拍車The Naked Spur』は傑作だ。

主人公はジェイムス・ステュアート、ヒロインは『サイコ』のシャワー・シーンであまりにも有名なジャネット・リーの西部劇。

「西部劇というジャンルの終わり頃に作られた作品」というにおいがプンプンとする作品で、西部劇の歴史についての授業があったらまず登場するだろうという作り。

お話は、ジェイムス・ステュアートが賞金稼ぎに悪党を二人の仲間とつかまえるのだけど、その賞金をめぐって三人のあいだには緊張が走るし、悪党はそれを利用してなんとか逃げようとする。さらには悪党の女友達ジャネット・リーも、悪党と主人公との間で右往左往する。

というわけで、お話はほとんどサスペンス。でも西部劇っぽい活劇もあるし、舞台はロケ。荒涼とした道中の風景が、人物たちの心象とマッチしている。

ところで、主人公の二人の仲間というのは、鉱探しに今までずっと無駄に人生を費やしてきた老人ジェシー(ミッチェル)と、酋長の娘に手を出してインディアンに追われる騎兵隊くずれのロイ。主人公も保安官だと嘘をついていたり、なかなか完璧にまっとうな人間というのはこの映画には出てこない。

途中、復習に燃えるロイが勝手に手を出して、インディアンの一体を全滅させる戦いのシーンがあって、これはすごい迫力。おそう方もちょっとびっくりした感じの奇襲になるのだけれど、描き方が相当リアルだ。

ラストの締めくくり方はこの映画ならではの微妙な感じ。西部劇が終わりにさしかかった、というのは、もはや正義と悪を分けることができなくなったからで、そこでは一人の人間に同時に善と悪が潜むことになる。あるいは一人の人間のその曖昧さ事態が問題になる。これは、そういうたぐいの映画の一つの代表的なものだと思う。


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2011年01月01日

2000―2010年ベスト

2000―2010年ベスト10

蓮實重彦(『カイエ・デュ・シネマ』誌(2010年1月号)掲載)

1位 『チェチェンへーアレクサンドラの旅』 アレクサンドル・ソクーロフ
1位 『チェンジリング』 クリント・イーストウッド
1位 『愛の世紀』 ジャン=リュック・ゴダール
1位 『労働者たち、農民たち』 ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
5位 『百年恋歌』 侯孝賢
5位 『三重スパイ』 エリック・ロメール
5位 『家宝』 マノエル・ド・オリヴェイラ
8位 『石の微笑』 クロード・シャブロル
8位 『鏡の女たち』 吉田喜重
10位 『アンナと過ごした4日間』 イエジー・スコリモフスキ
10位 『コラテラル』 マイケル・マン
10位 『ヴァンダの部屋』 ペドロ・コスタ
10位 『ダージリン急行』 ウェス・アンダーソン
10位 『デス・プルーフ in グラインドハウス』 クェンティン・タランティーノ
10位 『ユリイカ』 青山真治
10位 『鳳鳴― 中国の記憶』 王兵
10位 『真昼の不思議な物体』 アピチャッポン・ウィーラセタクン
10位 『叫』 黒沢清
10位 『青の稲妻』 ジャ・ジャンクー
10位 『宇宙戦争』 スティーヴン・スピルバーグ
10位 『ヤンヤン 夏の想い出』 エドワード・ヤン
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2010年12月31日

Best 10 films in 2010

蓮實重彦選(Fiim Comment』誌(2011年1/2月号)掲載 )

Bellamy 『刑事ベラミー』(クロード・シャブロル)
District 9  『第9地区』(ニール・ブロムカンプ)
Film Socialisme 『ゴダール・ソシアリスム』(ジャン=リュック・ゴダール)
Fuk sau - Vengeance 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(ジョニー・トー)
Guest 『ゲスト』(ホセ・ルイス・ゲリン)
Knight and Day 『ナイト&デイ』(ジェームズ・マンゴールド)
Outrage 『アウトレイジ』(北野武)
Tetro(フランシス・フォード・コッポラ) *日本未公開
Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives 『ブンミおじさんの森』(アピチャッポン・ウィーラセタクン)
Unstoppable 『アンストッパブル』(トニー・スコット)
加えて、ドキュメンタリー作品

Ne change rien 『何も変えてはならない』(ペドロ・コスタ)

未見の作品

Essential Killing 『エッセンシャル・キリング』(イエジー・ スコリモフスキ)
Certified Copy 『トスカーナの贋作』(アッバス・キアロスタミ)
I Wish I Knew 『海上伝奇』(ジャ・ジャンクー)
タグ:ベスト
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2010年10月09日

Eric Rohmer, Pauline à la plage, 1983

エリック・ロメールの1983年の作品。15才のアマンダ・ラングレの若い魅力と、アリエル・ドンバールの成熟した魅力がともに楽しめる映画。



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2010年10月03日

絶対的な処女作

蓮實重彦いわく、映画には「絶対的な処女作」なるものがある。以下が彼が挙げるリスト。

ニコラス・レイ『夜の人々』
ジャック・ロジエ『アデュー・フィリピーヌ』
ベロッキオ『ポケットの中のにぎり拳』
カネフスキー『動くな、死ね、甦れ!』
ジャ・ジャンクー『一瞬の夢』
チョン・ジェウン『子猫をお願い』

ところで、ジャック・ロジエ『アデュー・フィリピーヌ』とチョン・ジェウン『子猫をお願い』には、なにか似た雰囲気がある。ぜひ見比べてみてほしい。
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2010年06月29日

細田守、サマーウォーズ、2009

細田守は前作の『時をかける少女』が異常によかったので、新作を楽しみにしていた。これをフランスでやってくれたのはありがたい。これは、新しいことになんにも挑戦していない。それどころか、パスティッシュしかやってない。いわゆる「お約束」と「まね」のみで作られている。ところが、それが心地よい。

夏休みに親戚家に大勢集まるとか、しかもそれがほのかに思いを寄せている先輩の家だとか、高校野球を応援してたりだとか、ネットのシステムが暴走したりだとか、漫画によくあるネタと、夏によくあるネタ、最近よくあるネタなんかが絶妙な配分具合でごっちゃになっている。その配分がうまくて、オタク映画になってもないし、ただのネタ映画にもなっていない。これはうまい。

この映画一つを題材にするだけで、現代の日本文化についてすべて語れると思う。それぐらい豊かな作品だ。映像の出来もすばらしい。これだけ情報量があって、ポップでかつ先端のことを話題にしたアニメを作っているのは日本でだけ。これは、現代日本のある種の結晶のような作品だ。



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2009年04月15日

Elia Kazan, Wild River, 1960

見る機会がほとんどないだろうこの映画、しかしカザン監督のお気に入りらしくて、彼はこの映画が不憫でフォックスから買い取ろうとしたらしい。でもすごいいい映画で見られたのは幸運だった。詳しい解説は以下のページにあるので、ここでは簡単なことだけを書くことにする。

http://www2.netdoor.com/~takano/southern_film/wild_river.html

1930年代のアメリカ、洪水で苦しむテネシー川にニュー・ディール政策の一環としてダムを造っている。そのダムのせいで沈むことになる川中の島に強情なおばあさんが住んでいて、たちのこうとしない。そこに説得にやってくる男と、そのおばあさんの娘が恋におちる。この娘さん役のLee Remickが青い目をしていて神秘的だし若いし綺麗なんだよね。この娘さんとこの筋だけでもう名作って感じ。

カザンのほかの映画と同じくこれもセリフ劇って感じの映画だけど、画面に映っている家とかがすんごいリアル。虫も這ってるし、いつも雨が降っているしで、なんだか画面にほんと迫力がある。ぼろぼろの家が醸し出す臨場感みたいなの、そういうのを撮っている映画って最近見ないよなあ。そういうぼろぼろの家で子どもが二人いる女の子と恋に落ちる、なんかどうしようもなくリアルなんだけど、これ。でも、夢がなさそうな恋愛だけに、Lee Remickが迫るときのセリフはすごい、っていうか、そういうこと言われるのってどんな気分なんだろう。羨ましいものだ。そして泥のなかで男が言う「ぼくは後悔するだろうし、きみも後悔すると思うが…結婚してくれ」っていうセリフもまたよい。

1930年代の、アメリカ南部の雰囲気っていうのがすんごい出ている。それだけでほんとに価値がある。そして映画の最後、おばあさんの埋葬の時、ニルヴァーナもカバーしていたLead Bellyの"Where Did You Sleep Last Night?"を歌っているのにはびっくりした。そういや、同時代なのか。
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