2009年04月14日

Tony Gilroy, Duplicity, 2009

Julia RobertsとClive Owenが演じるスパイ合戦映画。二人は恋人で、お互いに同じ会社のスパイチーム二杯って、ライヴァル会社の新製品に関する情報を盗もうとする。で、ジュリア・ロバーツが二重スパイをやっていて、ライヴァル会社の内部から情報を盗もうとするわけだけど、彼女の接触相手がClive Owenで、二人は数年前に一夜を共に過ごしたことがある。で、その二人のやりとりが冒頭で繰り広げられるわけなんだけど、次第に二人の関係がもっとややこしいことになっているということが分かってくる、というほんとに相当ややこしい映画。監督はThe Bourne Identityのシリーズの脚本家だった人で、この映画の脚本ももちろん彼。

ちょっと難しい筋が大人むけっていうのと、かなり作りこんだ映画だけに万人向けではないかもしれないけれど、ぼくはこれは今年の映画ベストテンを選ぶとき、『スラムドッグ・ミリオネア』に匹敵する映画だと思う。そんくらい気に入った。演出も完璧だし、主役二人の魅力もすごい。Julia Robertsでこんなに可愛かったっけ? Clive Owenってこんなにいい俳優だったっけ? 何より、二人のやりとりがほんとに面白い。いっつもお互いに腹の探り合いをしていてサイコーです。なんかすんごい古典的なものなんだよね、こういう大人のやりとりって。デビュークレジットのスローモーションのシーンなんかも最高だし、ほんとに隅々まで気が利いている。圧倒的なまでにエンターテイメントで知的で繊細だ。ああ、ほんとこういう映画ってアメリカでしか作られないのはなぜなんだろう。
posted by 映画狂人百歩手前 at 09:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月25日

Costa-Gavras, Eden à l'Ouest, 2009

コスタ・ガヴラスはダスティン・ホフマンが出てた『マッド・シティ』なんかを撮った人で、日本でも知られている監督。これは、フランスにボートで密入国したアラブ系の青年がフランスをパリに向けて旅するという話で、いろんなことが起こる。

ついたのはヌーディスト・ビーチで、一度入ると食べ物食べ放題のすごく贅沢なところ。そこで彼はドイツ人婦人と懇ろになってかくまってもらったりする。そのあと、うまくビーチを抜け出して、フランスをヒッチハイクでたびする。そこでいっつも喧嘩ばっかりしている夫婦に拾われたものの、極寒のなかに放り出されるとか、いかにもありそうな小ネタを盛り込んでくる。そして、最後パリにつくと、人々の冷たさってのがしみじみを感じられる。個人的には、パリの街にあったテントの中がどうなっているのかを見られて満足。まあそういう映画。結局、Sans Papierのアラブ人を主人公に、フランスって国を描いているわけで、これはけっこうリアル。もしフランスって国ってどんなの?って聞かれたらまっさきにこの映画を見せたい、そう思った。
posted by 映画狂人百歩手前 at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月24日

Ann Hui, Boat People(望郷), 1982

ヴェトナム戦争終了直後のダナン郊外を、日本人カメラマンが仕事で訪れ、そこで地元の悲惨な現状を目の当たりにするという話。そこで彼が出会うチン・ニアンという少女がかわいい。これがほんとにかわいいので、それだけでも見る価値はある。この子が雨に濡れながらたばこを吸って、カメラの前でポーズを取るシーンなんかがこの映画の白眉。アジア人の女の子のかわいさというのは、白人の少女が持っているのとはぜんぜん違う。これはいったいなんなのだろうか。

ところで、この映画、カメラマンが日本人のはずなんだけど、役者は日本人じゃなくて、もう一人の日本人と話す日本語がとても変。明らかに日本語あんまりできない人が中国語から翻訳したっていう感じの奇妙な日本語を、変なアクセントで話すものだから、日本人には理解できない。これ、日本で公開するってことまったく考えてなかったんだろうなあ。そういうところに時代を感じる映画だ。
posted by 映画狂人百歩手前 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月23日

John Patrick Shanley, Doubt, 2008

ダウト ~あるカトリック学校で~ [DVD]は、ペドフィリアの神父を描いた映画で、これをヨーロッパではディズニーが配給しているっていうので話題になった。ほんとに、なんでこんなのをディズニーが配給するのかわけわかんない。でも、すごい映画だった。

メリル・ストリープが、いかにもはじめは意地悪で厳格なシスターとして登場してくるのだけれど、これがPhilip Seymour Hoffman演じる神父と丁々発止のやりとりをする。なんというか、感情を表に出さないことを訓練している中年シスターの、しかし断固とした決意と精神力を感じさせる演技なのだ。この人の演技のおかげで、映画全体にただならぬ緊張感が漂っている。

posted by 映画狂人百歩手前 at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月18日

Wong Kar-wai, Days of Being Wild(欲望の翼), 1990

何度見てもやっぱりこの映画はいい。初めの方なんか見ていてほとんど恍惚状態が延々と続いてしまうのだ。監督二作目にしてこの完成度っていうのはほんとありえない。Christopher Doyleのカメラもひたすら冴え渡っている。そして、ウォン・カーウェイは女の魅力ってものをすんごくよく知っている。ほんとにこの人は女性好きだと思う。

少しジメっとして自己に沈滞しているようなカリーナ・ラウと、踊り子で気性の激しいマギー・チャンは、明らかに両極に位置する二つの女のタイプを対照的に提示するために出されてきている。そして、二人ともとても魅力的なのだ。だいたい、この二人の顔がどれだけきちんと撮られているか。出会ったときの普通の顔、恋に落ちていく瞬間の顔、そして事が終わった後ベッドで見せる何ともいえない艶めかしい表情、男に甘えてじゃれついているときの表情、怒ったときの表情、これらの過程と表情が二人それぞれにおいて繰り返されるわけなのだけれど、まさに女性というものが見せる魅力的な表情のオンパレードという感じ。

そして、二人がそれぞれヨディ(レスリー・チャン)と別れるときに見せる苦しみの表情。表情だけで濃厚なドラマを語ってしまう女性の顔。私たちが濃縮された人生というカクテルを味わうのはそんなシーンを見るときなのだ。ああ女たち。

この映画はもちろん男たちについての映画でもある。アンディ・ラウ演じる警察官の一夜だけの出会いと恋。ジャッキー・チョン演じるサブがミミに寄せる激しくも哀しい片思い。そして二人の女を捨て養母とフィリピンに旅立ち、電車の中で死ぬレスリー・チャン。いい男ばっかりだし、それぞれの男が見せる表情もまたいい。レスリーの儚い笑顔を見ているとなんだか泣きそうになる。

これは小津の最良の作品にも匹敵する傑作だとぼくは思う。濃厚な映画ってのはどういうものなのかってことを教えてくれる。出ている俳優たちもまさに香港オールスターズ。ほとんどいつも大量の雨が降っている薄暗い香港の街と、狭苦しい部屋の中で繰り広げられる出会いの物語。音楽の使い方も見事。これは、『恋する惑星』とはまったく違う、大人の恋の話だ。続編はあの『花様年華』ね。


posted by 映画狂人百歩手前 at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月12日

David Fincher, The Curious Case of Benjamin Button(ベンジャミン・バトン 数奇な人生), 2008

デヴィッド・フィンチャーってこんな大家だったんだね、知らなかった。なにしろ彼の映画を見るのは正直言うと、『エイリアン3』以来だから16年ぶりか。ってどんだけ見てないんだよって感じだよね、すいません。でも、これだけ上手い監督がいるなんて知らなかった。演出ってものがなんなのかを知り尽くしているよこの監督。

俳優たちもすごい。歳をとったり若返ったりするたびに交替するんだけど、別人という感じがしない。これはすごいことだと思う。ほんっとチャレンジングだと思うよ、これ。主人公が若返るって設定は、人生のさまざまな局面を極端な形で浮かび上がらせるために使われているんだと思う。それに俳優たちがよく応えた。傑作だなあ。

完璧な映画ってのはその完璧さが逆に欠点だったりもするのだけれど、ここまで完璧な作品ってのはそうそうない。必見。

posted by 映画狂人百歩手前 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(1) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月11日

Noémie Lvovsky, La Vie ne me fait pas peur, 1999

けっこう映画に出ている女優さんが撮った映画。ものすごく仲の良い女の子4人が大人になる過程を、その過程だけをシーンの組み合わせで散文的に語ったとってもクレバーな映画。女の子の思春期ってものを見事に描いていると思う。これはすごい。4人の子が大人になる過程は、映画の撮影に実際に数年掛けて、女優さんに歳をとらせて撮っている。
posted by 映画狂人百歩手前 at 18:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月10日

Steven Soderbergh, Che, 2008

ゲバラの写真はアメリカ帝国主義にみんなが嫌けがさしている今、反アメリカ、反資本主義のシンボルとして広く流布している。その今、あえてその英雄像をくつがえすための映画が作られた。しかもアメリカで。きっともともとの意図としてはゲバラをネタに映画を作れば売れるだろう、という英雄像にのっかった企画だったに違いない。ところがソダーバーグはここでとても常識的な批判精神を働かせて、一人の人間ゲバラを描いた映画を作った。まあ、題材がそもそも一人の実在した人間なので、それほど面白い映画になるわけはないのだけれど、監督はやりたいことをやりぬいてる、という感じはする。

第一部のほうは、いろんな映像がいりまじって提示されて飽きが来ないし、ゲリラ戦の描き方もなかなか面白いし、最後には長い戦闘シーンがあってもりあがる。ところが第二部になると、延々と続くゲリア戦だけが舞台で、かなり頑張ってみないと最後まで見れないと思う。ただ、どちらもゲバラがすごい人物だってことは観客には伝わってこないようにできている。実際のところ、戦場なんてそんなもんだと思う。そして、わざわざボリヴィアで死んだゲバラの行動からは、過剰な理想主義者で現実との折り合いがつきにくい人物という感じがする。この映画がゲバラの脱神話化ということをもくろんでいるのは間違いない。そして、この映画は英雄の一生を知りに映画館にいった観客の期待を裏切ったわけだ。それは痛快とも言えるし、自分の批判精神に馬鹿正直という気もする。


ラベル:Steven Soderbergh
posted by 映画狂人百歩手前 at 19:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月07日

Chang Cheh, Shin Du Bei Dao(新・片腕必殺剣), 1971

むかしの香港映画なんてみる機会はあまりないけれど、見てみるとやっぱり面白いし、男たちはかっこよい。ぼくは前から、なぜ男同士の篤い友情は中国と韓国にしか存在しないのか疑問に思っているけれど、カンフーや武侠映画では男同士の友情ってのがなければ成り立たないくらいこれは重要なテーマだ。かわいい女の子なんて添え物にしか過ぎない。西洋映画とはまったく別なジャンルがここにある。

で、片腕になった男が友というか兄の敵を討つために敵地に乗り込むわけだど、これってほんとにジョン・ウーだよね。彼がチャン・チェの弟子だったってのはすんごい分かりやすい話。アクションは60年代だけあって、たわいもないものだけど、カンフーアクションの基本的な動きを全部見せてくれてはいるって感じ。これが90年代になると、もっと洗練されはするし、もっとダイナミックになるけどね。でもすでにワイヤーアクションも使ってる。

60年代の武侠映画(つってもカンフー映画とジャンル的に同じだけど)はほんとに同時代の日本映画なんかと雰囲気がよく似ていて、親しみを感じるということを発見した。ショウ・ブラザースの映画、発掘しがいがありそうな予感だ。


posted by 映画狂人百歩手前 at 08:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月06日

Wong Kar-Wai、Chungking Express(恋する惑星)、1994

「重慶森林」という意味の原題のこのウォン・カーウェイ第三作は香港映画のイメージを塗り替えることになった。むかしはテレビのゴールデンタイムでこの映画が放映されていたなんてことを今の人は信じるだろうか? これを見たのはきっと今回で三度目くらいだけれど、スクリーンで見られた幸せに浸ることのできる傑作で、まったく古びてない。ほんとにすごい作品。

まず、金城武がかわいい。死ぬほどかわいい。それからフェイ・ウォンがボーイッシュで死ぬほどキュート。それからトニー・レオンもまだほんと若くてほんとかわいい。この三人にやられます。それからクリストファー・ドイルのこれでもかっていうドイルな感じの映像。彼もこれで有名になった。まあ、どんだけこの映画がエポック・メイキングだったかって感じだよね。

だって今見ると、これ『アメリ』じゃない? ひとんちの鍵手に入れて、勝手に入って、缶詰取り替えたり石鹸新しくしたり、金魚水槽に足したり、フェイ・ウォンが好き放題するわけ。で、やられたほうはやられたほうで、石鹸に「おまえ太ったな」とか、シャツに「おまえ勝手に変わるなよ、アイデンティティを大事にしろ」とか話しかけるわけだ。はあ、素敵だ。

なんにしても、フェイ・ウォンの雰囲気だよね。お店でひたすら大音量で「夢のカリフォルニア」かけて、掃除なんかも上の空でいつもやってる変というか、頭のネジが二十本くらいぶっとんでる女の子。いいです。こういう子が周りにいたらいいなあっていう感じ。それとトニー・レオンっていう取り合わせがまたいいじゃないですか。いいね、ほんといいね。ウォン・カーウェイの映画が好きだなんて言ってると軽く思われるかもしんないけど、これは文句なく大好きと言うしかない。
posted by 映画狂人百歩手前 at 07:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。